改正消費税法に基づく「総額表示方式」の実施に当たっての独占禁止法及び関係法令に関するQ&Aについて ( http://www2.jftc.go.jp/pressrelease/03.december/031203.pdf より)平成15年12月3日公正取引委員会
消費税法の改正により,平成16年4月1日から,消費者に対して「値札」や「広告」などにおいて価格を表示する場合には,消費税相当額(地方消費税相当額を含む。)を含んだ支払総額の表示を義務付ける「総額表示方式」が実施される。今般,公正取引委員会は,総額表示方式の実施に当たり事業者,事業者団体等からこれまでに寄せられた独占禁止法上及び関係法令上の考え方についての相談のうち,主要なものについて独占禁止法及び関係法令に関するQ&Aとして取りまとめ,公表することとした。当委員会は,総額表示方式の実施に当たり,優越的地位の濫用,下請法違反,不当表示,事業者団体による構成事業者の活動に対する不当な制限等の行為が行われないよう監視を行うとともに,独占禁止法又は関係法令に違反する行為については厳正に対処することとしている。
なお,総額表示方式の実施に当たっての独占禁止法上及び関係法令上の考え方に関する個別具体的な相談については,別紙のとおり窓口を設けている。
第1についてのお問い合わせ先公正取引委員会事務総局経済取引局取引部企業取引課 電話03−3581−3373(直通)第2についてのお問い合わせ先公正取引委員会事務総局経済取引局取引部消費者取引課 電話03−3581−3375(直通)第3についてのお問い合わせ先公正取引委員会事務総局経済取引局取引部相談指導室 電話03−3581−5481(直通)ホームページhttp://www.jftc.go.jp第1 総額表示方式の実施に伴う優越的地位の濫用及び下請法に関するQ&A·第2 総額表示方式の実施に伴う表示に関するQ&A第3 総額表示方式の実施に伴う事業者団体の行為に関するQ&A<別紙>独占禁止法等の相談窓口<参考>消費税率の引上げ及び地方消費税の導入に伴う転嫁・表示に関する独占禁止法及び関係法令の考え方第1 総額表示方式の実施に伴う優越的地位の濫用及び下請法に関するQ&A
問1 従来消費税抜きの価格を販売価格として表示していたが,総額表示の義務付けに伴 い,税抜きの価格にそのまま消費税5%を上乗せして消費税込みの価格を表示すると消費者に値上げしたかのような印象を与えるため,従来の税抜きの価格をそのまま税込みの販売価格として用いることとし,納入業者からの仕入価格を消費税分引き下げることとしたいが,問題はないか。 答 従来,税抜きの価格を表示して販売されていた商品について,総額表示方式の実施後
も小売業者が消費者向けの表示価格を変更せず実質的に販売価格の値下げを行うことは,それ自体が独占禁止法上問題となるものではありません。ただし,小売業者が納入業者に対して取引上優越した地位にある場合に,この値下げのために納入業者からの仕入価格を消費税相当分について納入業者と十分協議することなく一方的に引き下げることは,優越的地位の濫用として独占禁止法に違反するおそれがあります。なお,ここで説明したような行為が下請法上の下請取引において行われる場合には,買いたたきとして下請法に違反するおそれがあります。(注)本Q&Aにおいて,小売業者が納入業者に対して取引上優越した地位にある場合とは,当該納入業者にとって当該小売業者との取引の継続が困難になることが事業経営上大きな支障を来すため,当該小売業者の要請が自己にとって著しく不利益なものであっても,これを受け入れざるを得ないような場合であり,その判断に当たっては,当該小売業者に対する取引依存度,当該小売業者の市場における地位,販売先の変更可能性,商品の需給関係等を総合的に考慮する。
問2 従来税抜き価格による納品伝票を用いて取引を行ってきたところ,小売価格の総額表示化に伴い,受発注手続についても税込み価格で行うこととし,納入業者に対して納品伝票の記載を税込み価格で行うよう求めることに問題はないか。 答 納入業者に納品伝票の記載を税込み価格で行うよう求めること自体は独占禁止法上問題ありませんが,小売業者が納入業者に対して取引上優越した地位にある場合,例えば納入業者が作成する納品伝票に記載される価格を税込み価格とするためにシステムの変更等を必要とし,追加的な費用が必要となるにもかかわらず,納入業者と十分協議することなく一方的に,その費用を全く負担せず,又はその費用を考慮することなく仕入価格を定める場合は,優越的地位の濫用として独占禁止法に違反するおそれがあります。
なお,十分な協議をすることなく一方的に,上記のような費用を全く負担せずその費用を考慮しないまま仕入価格を定める行為が下請法上の下請取引において行われる場合には,買いたたきとして下請法に違反するおそれがあります。
【戻る】
問3 従来税抜き価格を記載した発注書面により納入業者に発注を行ってきたが,総額表示の義務付けに伴い,納入業者への発注も税込み価格を記載した発注書面によることとしたい。これに伴って仕入単価に円未満の端数が生じる場合があるが,この端数を切り捨てて発注することに問題はないか。 なお,このような仕入単価の端数の切り捨てが下請法上の下請取引において行われる場合には,買いたたきとして下請法に違反するおそれがあります。
【戻る】
問4 納入業者には納入に当たって小売価格(税抜き)を記載した値札を付けて商品を納品してもらっている。総額表示の義務付けに伴ってこの小売価格の記載を税込み価格とする必要があり,今後は税込み価格を記載した値札を付けて納品してもらうこととなるが問題はないか。
答 小売業者が納入業者に小売価格を記載した値札を商品に付けて納めさせている場合に,総額表示の義務付けに伴い当該値札上の表示を税抜き価格から税込み価格に変更することについては,納入業者に費用の負担が生じない場合には特段独占禁止法上及び下請法上の問題とはなりません。
ただし,小売業者が納入業者に対して取引上優越した地位にある場合には,納入業者が値札への表示の変更を行うために費用が必要となるにもかかわらず,納入業者と十分協議することなく一方的に,その費用を全く負担せず,又はその費用を考慮することなく仕入価格を定める場合は,優越的地位の濫用として独占禁止法に違反するおそれがあります。また,納入業者と十分協議することなく一方的に,その費用を全く負担せずその費用を考慮しないまま仕入価格を定める行為が下請法上の下請取引において行われる場合には,買いたたきとして下請法に違反するおそれがあります。
【戻る】
問5 平成16年4月1 日から総額表示が義務付けられることに伴い,3月末から4月にかけて店舗中の商品の値札を税抜き価格の値札から税込み価格の値札に付け替えたい。ついては値札を付け替える商品を納入した納入業者から従業員を派遣してもらい,値札の付替えを行ってもらいたいと考えているが問題ないか。
答 小売業者が納入業者に対して取引上優越した地位にある場合に,派遣の条件,対象商品等について,納入業者と十分協議することなく一方的に従業員の派遣を要請することは優越的地位の濫用として独占禁止法に違反するおそれがあります。
なお,ここで説明したような行為が下請法上の下請取引において行われる場合には,不当な経済上の利益の提供要請として,平成16年4月1日から施行される改正下請法に違反するおそれがあります。
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問6 従来税抜きの価格を販売価格として表示していたが,平成16年3月までに納入した商品について4月に販売する場合,4月以降に税抜き価格にそのまま消費税5%を上乗せして税込みの価格を表示すると消費者に値上げした印象を与えるので従来の税抜きの価格をそのまま税込みの販売価格として用いることとし,3月までに納入した商品の代金について消費税額分を差し引いて支払うことに問題はないか。 答 小売業者が納入業者に対して取引上優越した地位にある場合に,既に単価を決定して発注した商品について,4月から消費税の総額表示化が義務付けられることを受けて,従来税抜き価格で行っていた表示価格をそのまま税込みの販売価格として用いるため,納入業者と十分協議することなく一方的に,仕入代金を減額して支払い,あるいは引き下げた単価をさかのぼって適用することは,優越的地位の濫用として独占禁止法に違反するおそれがあります。
なお,下請法上の下請取引においては,既に単価を定めて発注したものについて発注後に引き下げた単価をさかのぼって適用することは,下請代金の減額として下請法に違反します。
【戻る】第2 総額表示方式の実施に伴う表示に関するQ&A
問7−2 「税抜きレジシステム」を用いる場合,ある商品を複数個購入した場合,税抜きレジシステムに基づき計算される金額の方が表示された単価に購入個数を掛けた金額より高くなるケースが発生する(上記問7−1参照)。
このため,消費者からの苦情を避けるためには,値札においては,消費税額の端数を切り上げた価格を表示するとともに,レジシステムにおいては,消費税額の端数を切り捨てる計算をすることにより,消費者が値札上の表示単価を見て認識する額よりも税抜きレジシステムに基づき計算された金額の方が高くなることを回避することにしたい(以下の例参照)が問題ないか。
(例)本体価格90円の商品について
・表示価格
90円×1.05=94.5円(端数切り上げ) 表示価格95円
・実際の購入金額
90円×1.05=94.5円(端数切り捨て) 購入金額94円
○ 当該商品を10個購入した場合
・消費者の認識する購入価格
95円×10個=950円
・税抜きレジシステムに基づき計算された実際の購入価格
90円×10個×1.05=945円
このような方法を採ることによって,「95円」の単価表示を見た消費者は,当該商品を
10個購入すれば,合計950円になると認識するが,実際の購入金額は945円となり,消費者が値札の単価を見て認識する額(950円)よりも実際の購入金額の方が高くなることを回避することができる。
答 値札では消費税額の端数を切り上げたものを表示し,レジ計算では端数を切り捨てる計算方法を用いることについては,単数購入する場合においても,表示された金額(値札上の表示価格「95円」)と実際の購入金額(「94円」)が異なることになりますから,消費者を混乱させ,ひいては,価格表示に対する消費者の不信感を招くことも考えられますので,適正な消費者取引の確保の観点からは,好ましくないと考えられます。
【戻る】
問8 「税抜き価格」を大きく表示し,「税込み価格」を小さく表示することは,景品表示法上問題となるか。
(例) 「9,800円 (税込10,290円)」答 大きく表示された税抜き価格である「9,800円」を税込みの販売価格であると一般消費者に誤認されるおそれがない限りは,景品表示法上問題とはなりません。
そのような誤認を生じさせないためには,税込み価格は,税抜き価格と同様に分かりやすく表示されることが必要であると考えられます。
【戻る】
問9 総額表示方式が導入された状況において,総額表示義務に反し「税抜き価格」のみを広告表示することは,景品表示法上問題とならないか。
また,店頭において,例えば「9,800円」と税抜き価格を広告表示し,店舗内のレジや掲示板に「当店の価格は税抜です」と表示している場合や店舗内には「9,800円(税込10,290円)」と表示している場合には,景品表示法上問題とならないか。答 総額表示方式が導入された状況において,消費者が商品・サービスの価格表示は,総額表示であると認識する場合に,別途消費税額を支払う必要があることを明りょうに表示しないで,例えば,「9,800円」と税抜き価格のみを広告表示し,実際には,消費税額を徴収して,「10,290円」で販売している場合には,販売価格が安いと一般消費者に誤認されるおそれがあることから,景品表示法上問題となります。
また,店頭において,「9,800円」と税抜き価格のみを広告表示し,店舗内において別途消費税額を支払う必要があることを表示してあっても,一般消費者に当該「9,800円」が税込み価格であると誤認されるおそれがある場合には,景品表示法上問題となり得ることに注意する必要があります。
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問10 メーカー希望小売価格の表示については,どのように表示すればよいのか。 しかし,メーカー希望小売価格は,小売業者において,二重価格表示(事業者が自己の販売価格に,当該販売価格よりも高い他の価格(以下「比較対照価格」といいます。)を併記して表示するもの)の比較対照価格として用いられる場合がありますが,消費者の適正な選択に資する観点からは,二重価格表示の比較対照価格として用いられるメーカー希望小売価格について,税込みのものであるか,税抜きのものであるか,明示されていることが望ましいと考えられます。
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問11 事業者団体において,財務省が示した総額表示方式の5つの表示例のうち適当と思われる1例を自主基準として示すことは問題ないか。 答 事業者団体が総額表示方式の実施に伴って,消費税込み価格等の表示方法について自主基準を設定すること,また,その場合の表示方法を1例のみとすることについては,構成事業者にその遵守を強制しないものである限り独占禁止法上問題ありません。